
聖国ホテルならよく知っている。なぜならかれんは3ヶ月後、そこで結婚式を挙げる予定だからだ。
動画の送り主は、あえてかれんのよく知っているホテルを指定したのだろうか?ただの偶然かもしれない。しかしそれでも、送られてきた動画は単なるいたずらだとは思えなかった。
——どうしよう……いや、絶対に行かない。行けるわけない!
そのときかれんはふと、内股に違和感を感じた。
仕事用だがお気に入りの黒いタイトスカートの中に手を入れてみると、ストッキング越しに湿り気を感じる。摺り合わせた指が、ほんの少し糸を引くように滑っている。
――や、ヤだっ……!
それはかれんの愛液だった。愛液が、本物のかれんの愛液が、膣から溢れて内股を伝っている。もちろんこんなに濡れたのは、はじめてだった。しかも、触れてもいないし、触れられてもいない。
ペットのように躾けられ、性的な奴隷として振る舞うアブノーマルなセックス動画。はじめて触れる、主従の世界。それらに触れて、かれんは不覚にも興奮してしまったのだろうか?
――違う、、動画の女性がすごく自分に似てたから……あんなセックス、好きなわけないじゃない……
しかしかれんはショーツの中に手を入れていた。そして秘部にそっと触れた。もちろんそれは、溢れる愛液の量を確認するための、そして身体に異常がないかを確認するための、単なる作業に過ぎないはずだった。しかしその指は、そうすることが当たり前であったかのように、かれんが自分で自分を悦ばせるためのスピードと強弱を探しながら、ゆっくりと湿った割れ目を撫でていく。
「あ、、あんっ……」
思わず吐息が漏れる。いまのかれんには、吐息にさえ愛液が混じっているようだ。かれんは全身が性器になり、そして全身から愛液が溢れているような気がした。
指は、密壺から溢れる愛液を掻き分け、濁流を遡上するように、ゆっくりと上方の陰核に向かっていく。
「あっ……!!」
ビクンビクンッ、と身体を震わせながら、かれんは反対の手を口元にあて、叫び声を押し殺した。
「ぐっ……うぐっ……ぁ…ぁ、ああっっっ!!」
「ああっああああっ……!!」
しかしかれんの指は、その理性とは反対にクリトリスを愛撫し、演技ではない本当の喘ぎ声を、かれんにあげさせていく。
無罪……かれんの頭の中にそんな言葉が浮かんだ。そう、私は何も悪いことをしていない。だから、だから…
「あっあっあっあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!!!」
ガクンッ、、と身体を震わせかれんは倒れ込んだ。
――こ、こんなに簡単に逝けちゃうなんて……こ、こんなの……はじめて……
大きく肩で息をしながら、それでも指は、さらなる快楽を求めていた。
——あぁっ……だめだめっ……! 止まらない…止まらなくなっちゃうよぅ……!!
もちろんこんなことは、はじめてだった。ショーツから溢れる愛液は、いまやスカートまで濡らしてしまっている。
——許して……お願い……本当の私はこんなじゃないの……許してっ……!
よだれと涙を垂らしながら、かれんは許しを請うた。しかしクリトリスはいらつくように勃起し、それを鎮めようと指で触れるたび、かれんはうめき声をあげながら、バタン、バタンッと腰を床に打ち付けた。
——本当の私は……こんなことしない……でも……こんなのはじめてなの……誰か……誰かっ……
そのときかれんはふと思いついて、床に落としてしまっていたスマホを掴んだ。真っ暗な画面を少し見つめたあと、意を決してもう一度、動画を再生する。そして画面の中の自分がしているように、四つん這いの後背位になり、ショーツをずらし、男性器の代わりに自分の指を二本、膣に差し込んだ。しかしなぜか物足りない気持ちになって、一本増やし三本にした。かれんは気づいていなかったが、それでやっと、動画で見た男性器と同じくらいの太さになったのだ。そして動画に合わせて、自分の指と腰を動かす。
すると——
「ぱちゅん、ぱちゅん」
あの音だ!!!
かれんがいままで聴いたことのなかった、膣に愛液が溢れていることを証明する、あの淫猥な音。かれんはなぜか嬉しくなった。しかし次の瞬間には罪悪感に襲われ、その次の瞬間には複雑な感情を処理しきれなくなって、無心になって膣をかき回した。
映像の中の自分を再現するかのように腰を揺らし続ける。かれんの指が膣の奥深くに達したとき、その興奮の強さと快楽の深さから、彼女は自分が求めているものを理解した。しかしそれは、罪を犯した自分の姿でもあった。
罪を犯したから、首輪をさせられたんだ――。
その瞬間、かれんは限りなく絶頂へ近づいた。
「あっ……!あぁぁっ……!ああぁぁぁ……っっ!!」
悲鳴にも似た叫び声は、淫らに甘く、部屋に響いていく。
「あっあっあっあっあっ……あぁぁぁぁぁぁっ!!」
動画の中のかれんもちょうど、逝くところだった。かれんは一緒に逝きたくなった。
「あぁっ、だめっだめっ……逝く、逝くっ!!あぁぁぁぁぁぁっ!!」
「あっ……!あっ……!あっあっあっあっあっあっあっあっ……!!!」
次の瞬間、彼女の身体はゆっくりと、しかし無造作に床に倒れ込んだ。子宮がまだびくん、びくん、と自分の意志とは関係なく収縮している。指はまだ膣の中に残っていたが、その膣はまとわりつくように、ぎゅっと指を締め付けている。
――ゆ、指が抜けない……
かれんの膣は、まるで指を抜いてほしくないと駄々をこねるかのように、自分の意志とは関係なく締め付けてくる。ゆっくりと指を抜こうとするだけで、膣が擦れ、電流のような快感が全身を襲う。
「あっ、あっ、あんっ……!」
なんとか膣から指を抜いただけで、かれんはまた軽く逝ってしまった。そしてそのままうつ伏せに倒れ込み、しかし肩で息をしながらすぐに半身を起こして、愛液で濡れる三本の指にむしゃぶりついた。
そして指をレロレロとしゃぶりながら、どうしても言ってみたくなったセリフをそっと、誰にも聞こえないように、囁いた。
「ご、、ごしゅじんしゃまぁ……先に逝って、、しゅ、しゅみましぇぇん……」
(続く)